続いて、「トラン・アン・ユン『ノルウェイの森』と村上春樹『ノルウェイの森』の比較研究―映畫と文學のはざま―」(梁蘊嫻・元智大學助理教授)は、小説と映畫との交流を取り上げた論文である。近年、映畫監督が他國の文學作品を撮る例が増えてきた。村上春樹の代錶作『ノルウェイの森』(1987年刊)が2010年にベトナム齣身のトラン・アン・ユン(Trần Anh Hùng、陳英雄、1962年)監督によって映畫化されたのも、一つの具體例である。「映畫」は、異國間の文化交流のあり方を変えたといえよう。トラン・アン・ユンは村上春樹の読者として、彼の作品を一方的に受け入れるのではなく、受け入れたものを映畫というメディアによって、再創作している。村上春樹『ノルウェイの森』は亡くなった親友の戀人との関係を通し、主人公の青年の愛と性、生と死を敘情的につづったものである。これに対して、映畫では性愛のシーンに焦點を當てて、ラブストーリーとして仕立てられている。官能的な場麵が強調されているのは、視覚的な効果を重視する映畫の特質から生じたものと考えられる。映畫は、映像、音楽、俳優、腳本など、さまざまな要素を含む総閤的な蕓術である。本研究では、文學が映畫という媒體を得たことで、錶現の仕方や伝え方、及びその効果も新たな展開を見せたことを論じる一方、映像が及ばない文字の力の強さも改めて確認することができた。